ESQUISSE

詩らしきもの

うつろい

ストローで飲んだ カフェの音が ペコンと潰れた 蝉はジリジリ ジリジリ 汗を流し続け 風は息をしていなかった 百日紅の真紅は ゆらゆらと 炎天下の陽炎に 荼毘にふされた男 夢は 森の深みに潜み じっと耐え忍ぶ もう何処にも 葬列の姿は 見られなかった お経…

紫陽花の道

紫陽花は せつない彩り 哀しみの色 涙雨に打たれ 薄紫の憂いは すがた哀しき 淡い移り気に 涙のひとつぶ 緑の葉先の 未練のしずく 降る雨に すべなく 立ちすくみ 惑う明日に こころは虚ろ いつの日か 降り止み まばゆい陽射し 行く先を照らすとき また歩ける…

春の悪戯

空の碧さは動かず 風の囁きは形ある 優しい音色は 私を誘(いざな)う響きで 唄いながら いま私の手を 不意に握って 駆けていった乙女 ほのか香り匂い立つ 柔らかな 泉の波紋のように 私の中にそっと潜んだ 物憂げな 悪戯な瞳よ

足の爪を切る ご無沙汰 丁寧に パキ パキ 体を踏ん張り 支えた叫び もがき 堪えた 歪な形 切り爪を 大事に 愛おしく集め 言い聞かせた (ありがとう) さようなら 足の指を 広げて曲げて (お願いします) また頑張ります

ヒメジョオン

姫女苑 誰にも知られず 熱きころ 他の草とともに 刈り取られ 清楚な素朴は 民草のこころに その根を残し 次なる時に 更に強く 咲き誇る

花筏

並木の道をゆるりと歩む 我の行く先垂れる桜 手を差し伸べて迎え来る 嗚呼、 匂い芳し 薄桃の香りに 汚れの身を清め 名残りの桜は はらりはらり散りゆけば 花の筏となるなり 悲喜交々の花びらは どこに流れ行く 願わくば我を乗せて 来世には麗しく咲き誇れ

あたらしき

新しき 朝を迎えるこころ 鳥のさえずり 浅葱の空に消えゆく 朧白き残月を見送る 古草に混ざりし若草の 仄かに香る春風に 古の我が身懐かしき 暫し彼方へと揺蕩う

渇いた涙

僕にはいつからか 渇いた涙しか流れない 哀しみに 溢れる思いを嗚咽し さざ波繰り返す刹那を堪える 聖の念じのように ひっそりと涙の亡き骸を遺し 送りびとのように天に還すのだ 僕には涙が流れない 人知れずひっそりと辻立ち 虚しい空を瞬き 溢れる星のしず…

美しさ

美しさとは どんなものか 人はまやかされる うわべの綺麗 外見の美しさは 必ず朽ち果てる 真な美しさを 捉えたとき 僕は初めて 真な美しさを知る 優しさの深み 凛とした意思 ゆかしさと慎み 気品ある麗しさは 言葉を持たぬ言葉 内なる美しさを 磨くことは 外…

空のやさしさは 誰でも覆う 碧きおおらかさ 風のリズムは 木々や草花が揺らぎ 色と香りの拍子を奏で 雲の楽しさは 見せゆく変化(へんげ) 生きるものへの 慈雨の音(ね)も落し 水の彩りは 精霊たちの絹衣 全ての色に優る やさしい温(ぬく)さと 心地よき…

さよなら熱気

中くらい開けた窓から 風がヤッホーして入って来た 次の風がホッホーって挨拶した 窓のカーテンは 思いっきりほっぺを膨らませ カーテンレールはカタカタ笑う お尻のトランペッターは プップーと夕暮れの時を放つ それを聴いて 部屋の熱気はさよならした

雨音

君には聞こえるか 流れる雨音は JAZZのピアノ音(ね) 僕が失ったオーラの音色 生命(いのち)のパルスだ 天を仰ぎ エネルギーの放電の シグナルを受け 薄く汚れて干からびた 心象のレシピにチャージする パウエルの夢を吸い エバンスのワルツを味わう さぁ…

未完の短編1〜3

和菓子屋の前で みたらし団子が僕に 微笑む 微笑む 秋風がそそのかす お月見団子はどこだ * 野球少年が歩いて行く 礼儀正しく 坊主頭はいつ栗の実に 変身するか考える 晴れやかに青い いわし雲の空の下で 秋刀魚はどこだ * スーパーの棚に 松茸風味の茶碗…

風のリズム

〜コンテ〜 不連続な歩道の石畳で タイヤは回る 空の陽気は パンパン跳ねながら 一直線に伸びる 車道に入り トルクを一段上げ 走る 滑らかに 風が耳元で囁く (もっと早く) 笑いながら 平らな路面を ペダルをぐんぐん廻して 顔をくすぐる 風を追いかける (…

はらりはらり

銀杏の葉が舞い降りる 黄金(こがね)のマントを翻(ひるがえ)し 微かな音(ね)は カノンの調べと 扇の舞 はらりはらり 今またはらりと 厳かな儀式 歩む道先に散り降り 樹木の温もりを 積み重ねる 秋の陽射しは 慈しみ深くまばゆく 幼き頃の毛糸の手触り …

スケッチ

草木たち 何処へも行かず じっと空を仰いで 静かに 小鳥たち空に 飛んでさえずる オーイ イクヨー ハヤクー アー マッテー マッテー 行ってしまった 草木たち動かず ただそこにいて 見送る視線は かなたに 見送った余韻は まだ風とともに続いてる

秋に想い

秋の陽射しを聴いて 木の葉の艶やかな舞を眺む 寂しき風は 並木の枝を撫でながら 黄金の揺らぎを送り込み 湖沼の鏡は茜の輝きを すすきの穂に照らし 歩む道先を示す 先人の朽ちた礎のもとに 生まれ出る紅き血潮のように 音の舞う真紅の絨毯を 足元こころ暖か…

回顧

窓に微かな街明かり きらめく電飾は 幾つかの法則で 連なり消えるを 繰り返す 世界中の いのちの明滅 生は濃縮され 蝉のように きらびやかな 瞬間は一瞬で終わる いのちの淡く儚い尊さ 活かされて 生きて 涙し汗する この至極のたまゆら 陽に焼けた一枚 生き…

道程

うら哀しい日々の 殺伐な暗き広がり 満たされぬ心 僅かな灯りの 白さだけ 熱く潤みを増す 瞳を閉じ 足の冷たき 夜を明かし 求めゆくもの はてなき旅路は 己がこころを 培う道程(みちのり) 惑いと懺悔の 足跡を残し ただひたすら 歩みゆく 道標あり道 道標…

カフェ・オ・レの幻想

猫のように アンモナイトに寝る 冷たくなった両脚を 自ら抱きしめ 発掘されるように 白亜の繭に 眠りに埋もれた化石 微睡みは 白い靄の中に 揺らめく湯気 陶磁器と錫の 滑らかな光を 編み込み 鼻孔をくすぐる 香り立ち 時間に ゆらゆらと 昇華していく 三万…

路線バスの夜

車窓を流れる光の群れ 夜のバスは幽玄な世界を誘(いざな)う 言葉を持たず流れゆくもの 漆黒の闇に紅き色 黄色や蒼き色が交じり 人々の意識の化身は 無関心を装う それぞれに気づかず 静寂な車内に にぎやかに 飛び交っている事を 僕は目の当たりにする 僕…

いとしき人

虫の音の囁く夜は 人恋しき ランプシェードに沁み入る 陶酔の独りグラス 尖り氷の音は ほろ酔いの響き 琥珀の輝きは 秋草の香り 淡い未練を 涼風に吹かれ 残り火を 冷ます夜が更ける 窓辺に観ゆる 下弦の月に 偲ぶ人あらば ホロホロこぼるる 月明かりは 耳元…

残月

漆黒の終幕を烏が告げる 時の使いが垂らした絵の具 闇のカーテンを淡く染めゆく 小鳥たちは眠りから覚め 怖々飛び立つ 幽閉されたキャンバスに 薄日の光芒が染み 何時しか シャンパンゴールドに彩り 弾けた 彼方に消え行く残月は 未練をひきずり 悲哀の音色…

月明かり

夜は密かに訪れ 静かさと冷ややかさ 闇夜の装いを携えて 草木は眠る 月の篝火が 家路を見つめ 月のない空を 嘆き悲しむ ひしがれた小径も 何処かで点す 家のあかりで暖かく装う あの道端で佇む 忘れられた小石にも 月明かりの影は差す 虫の音が 夜のともりに…

名残の月

流れ雲の切れ間に 霞む満月光りて 名残の夏の輝き 我が手に受ける 握る汗ばみ 微かに脈打ち 遠く夜空に 思いを巡らし か細き心に 焦がれの花を慕う 刹那き祈りは こころ仄かな香り 雷鳴に落ちる雫は 我のもの哀しいひと粒 貴方に焦がれ 思いを秘めて この滴…

嘆き

夏が最後のあがきをする 冷たき氷は 内在する火照りを消さず 噛み合わせの悪い歯は 髑髏のように カタカタ音をたてた 蒸された酸素は居残り じとじと湿りを吸い込み 鬱陶しく纏わりついてる 時が止まって 雑草を育成し 堆肥化した 錆びた自転車 放置されたバ…

心に火照る痛みは 錆びつきながら蓄積され 深い印影となり やがて鬼が形を現す 一週間を働いた 今日の休みは 洗濯をします 口数少ない眉間の縦じわは スケルツォに肢体をくねらせ 唸りを上げながら 重い汚れを浄め やがて笑みを見せる 洗い浄められた 重いエ…

秋の匂い

長い旅を終え 窓辺に届いた 微かな爽藾 凪いだ心に ゆっくりと波紋を広げ 時節のめぐりを漂わす 炎天の未練を残し あかねに暮れる終焉は ヒグラシの哀愁 名残の日々の 刹那い儚さよ 過ぎしゆく寂しさは 宵闇のカネタタキが 何処からともなく 小さき清らな惜…

残されたもの

怒涛の雨が 残り火を消す 狂喜乱舞な ひと夏の 傷痕を消し去り 足元の煩わしさが 膝を這いずり上がり 攻めにやって来る 脆弱な心は 烈火の轟音とともに 霞む息れに昇華し 天に昇っていった 龍の化身を願うように 茜の濃淡の雲間に 光の梯子が覗く 誰を祝福す…

盆踊り

今宵は宴 踊れや唄えや みんな輪になり 汗して舞えよ 手を叩け 秋風吹いて 移ろい告げる 蝉が勢い飛び出し 蜻蛉も釣られて踊り出す 今宵を四隅まで 謳歌する 鈴なり提灯の 紅き光りは 精霊を 神事の舞台へ招く 道しるべ いざ出でよ 踊りもてなす 浴衣姿の舞…