ESQUISSE

詩らしきもの

はらりはらり

 

     銀杏の葉が舞い降りる

     黄金(こがね)のマントを翻(ひるがえ)し

     微かな音(ね)は

     カノンの調べと

     扇の舞

 

     はらりはらり

     今またはらりと

     厳かな儀式

     歩む道先に散り降り

     樹木の温もりを

     積み重ねる

 

     秋の陽射しは

     慈しみ深くまばゆく

     幼き頃の毛糸の手触り

     遠く懐かしく刹那い

     母の匂いのように

 

     あの黄色の電灯の下(もと)

     母の編む毛糸玉に

     戯(じゃ)れる猫と

     炬燵(こたつ)にねそべった日

     戻ることのない

     温もりの世界

 

     人は何を感じただろう

     人は何を思っただろう

     人は何を失ったのだろう

 

     はらりはらり

     今またはらりと

     頬を伝うは

     懐かしき追憶(ついおく)

     暖かきノスタルジー

     この胸に積み重ねる