2020-07-29 うつろい ストローで飲んだ カフェの音が ペコンと潰れた 蝉はジリジリ ジリジリ 汗を流し続け 風は息をしていなかった 百日紅の真紅は ゆらゆらと 炎天下の陽炎に 荼毘にふされた男 夢は 森の深みに潜み じっと耐え忍ぶ もう何処にも 葬列の姿は 見られなかった お経のごとき 蝉の声が 黙々と 意識の中に すり込まれてゆく 黒揚羽が 脈絡もなく舞うように 否応なく この道を 歩いていく きっと何処かで ひっそりと 移ろいが 並んで待っている