ESQUISSE

詩らしきもの

うつろい

     

     ストローで飲んだ

     カフェの音が

     ペコンと潰れた

 

     蝉はジリジリ

     ジリジリ

     汗を流し続け

     風は息をしていなかった

 

     百日紅の真紅は

     ゆらゆらと

     炎天下の陽炎に

     荼毘にふされた男

 

     夢は

     森の深みに潜み

     じっと耐え忍ぶ

 

     もう何処にも

     葬列の姿は

     見られなかった

 

     お経のごとき

     蝉の声が

     黙々と

     意識の中に

     すり込まれてゆく

 

     黒揚羽が

     脈絡もなく舞うように

     否応なく

     この道を

     歩いていく

 

     きっと何処かで

     ひっそりと

     移ろいが

     並んで待っている